「管理職教育・育成のエキスパート」

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 テーマ45 管理職者として大局観を持つ

■管理職者として大局観を持つことの
  必要性を理屈として理解する

「なぜマネジメントが壁に突き当たるのか 
 田坂広志氏著(東洋経済新聞社)」より引用、参照します。

この本の中で、田坂氏は、複雑系について次のように解説しています。

・複雑系とは、複雑性をもったシステムのこと

・ものごとが複雑化すると、新しい性質を獲得する

・例えば、一つの水分子は、水素原子と酸素原子が
 結びついたものであるが、水分子は、
 水素原子とも酸素原子とも違う性質を持っている。
 水素原子と酸素原子が結びつたことにより
 水分子という新しい性質が生まれる。
 さらに水分子が数百万集まると温度によって
 水蒸気や氷、水など全く別な性質のものが生まれる。

・このような複雑性の特性は、物質ばかりでなく
 「生命、人間、社会、企業」などが持つ、
 すべての基本的な特性である。

・企業も「高度な複雑系」。
 企業は、単なる人材、資材、資金、情報などの集まりではない。
 開発、製造、販売といった機能の集まりでもない。
 企業はこれらの集まりの単なる「総和」を超えた、
 まったく新しい性質を示す「生命(いのち)」と呼ぶべきものである。

上記のようなことから会社は、
「社員ひとり一人」、「部署」、「部署が集まった会社全体」
とそれぞれに特有な性質を持っていることが分かります。

管理職者は、「部下ひとり一人」、「部署」、「会社全体」は、
それぞれ独自の行動基準や価値観などを持っている
ということを理屈として、理解しなければなりません。

職場の中では、大局観という言葉がよく使われますが、
仕事上発生する種々の問題に対応するためには、
「部下ひとり一人」、「部署」、「会社全体」
それぞれが持つ独自の性質を踏まえた上での総合的な視点からの判断、
つまり大局的な判断が管理職者には求められます。

■仕事の実践を通して大局観を体得する

大局観とは、実務的には、仕事上起きる様々な課題に、
例えば、「部下ひとり一人」、「部署」、「会社全体」のそれぞれの視点から、
課題への対応策として、今、考えている施策を講じた場合の
メリット、デメリットなどを考えて、
その課題に対する最善策を総合的に判断する力とも言えます。

また、それぞれのメリット、デメリットを考える際には、
「部下や同僚、上司の立場に立った視点」や
「管理職者としての自分の考え方や意識の持ち方、
業務スキルの問題など自分自身の問題として考える視点」
なども合わせて考えることも必要となります。

「木を見て森を見ず」という言葉もあります。
個々の木を正しく観察し、把握することも重要ですが、
同時に森全体を一望し、正しい判断をする能力が管理職者には、求められます。

課題への正しい答えは、管理職者である自分自身が見つけ出すしかありません。

このような、大局観を身に付けるためには、
上記のような種々の視点から、常に、考えて、考えて、考え抜くということを、
日々の職場の中で、意識的に実践することが必要です。